作文構成論

最近、内容の無いレポートを量産することが増えた。まあなんというかとりあえず書いて提出するというだけの作文である。具体的な授業名については政治的な理由で書かないけれども、つまりはレポートの内容は単純である。「○○について考察せよ」というだけのことであって、それをA4レポート用紙で1枚か2枚、すなわち大体1000字から2000字くらいのものを書けばよいのだ。正直簡単である。だが、どういうわけかてこずっている人たちがISerには多いようなので、せっかくなので僕が使っているでっち上げの手法と考え方を書いてみることにする。ちなみに、全てのレポートで通用するわけは無くて、あくまで一部のレポートについてのみであるが、これで大体1つのレポートが1時間程度で仕上がる。
まず、レポートというのは上から下につながっているものである、ということを認識すると良いと思う。すなわち、そこに出てくる論理展開は、あくまで順番に出てくるものであって、そこに入れ替えという概念を持ち込んではいけない。もちろんきちんとした校正をする場合にはそのようなことをする必要があるかもしれないが、これはあくまで形式的にレポートをでっち上げるための手法なのでそういうことは考えてはいけない。関係は無いが、僕のこの日記は基本的に上から下に順番に書いている。誤字脱字の修正以外で上に戻ることはほとんど無い。だからと言って、先を考えずに闇雲に書けばよいと言うわけではないのも事実なのだが。
次に、論理展開の基本として、いくつかの手法がある。リストアップすると、

  1. Aである。だからBである。(論理的発展)
  2. Aである。その理由はBである。(理由説明)
  3. Aである。例えばBという現象がある。(具体例の提示)

といった感じである。ほとんどこれだけでレポートくらいは仕上がる。具体的な例を用いて、これらの手法を解説していこうと思う。テーマとしては、例えば「色彩学と情報科学の関係性について述べよ」というものを取り上げる。似たようなテーマのレポートが実際にある上に、実際のレポートとは異なっているので良いのではないかと思う。
さて、まず最初に導入部分を書くわけだが、一応の方針を決めよう。このテーマから何を書けばよいかと言えば、何よりも「色彩学と情報科学は関係がある」ということを書かなければならないのはほぼ自明である。関係が無いと言ってしまうとどうしようもない。っていうかレポートにならない。それをまず心において書き始めよう。導入部分で書くべき内容というのは大したことは無い。単純に色彩学というものの存在に触れるだけでよい。その細かい内容とかについて解説を求められているレポートではないのだから、そんなことは一切書かなくても良い。ただし、色彩学を否定してはいけない。こんなレポートを出してくる先生なのだから、当然色彩学LOVEなのだ。持ち上げるくらいでちょうどいい。例えばこんな感じだ。

色彩学は、色と人間の関係について様々な角度から考察する分野であり、以前よりたくさんの研究がなされてきた。そして近年、さらにその重要性が高まってきている。

この重要性が高まってきていると言うのがポイントで、というか高まってきていないと困るのだ。なにせ、先生は好きなのだから、先生が好きなものは人気があるよ、と言ってあげる必要があるのだ。で、ここまで書くと、重要性が高まってきているその理由を書かなくてはならないと言うことに気づくだろう。すなわち、上のリストで言うと「理由説明」が必要になる。場合によっては「具体例の提示」をしても良いが、重要性が高まるという内容だけで適当に具体例を探すのも難しいので、ここは理由説明を使うのが妥当だろう。この理由説明については、適当にでっち上げてよい。ただし、常識と矛盾してはいけない。さらに、情報科学との結びつきを考えるということをやはり念頭に入れておくべきだろう。

重要性が高まってきている理由についてはいくつかあるが、その中の一つとして我々の生活形態の変化が挙げられる。

ものすごく無難な理由説明になっているのが分かると思う。というか無難でなくてはならないのだ。だってこれからどんな文章か続くのかまだ考えてないのだから(ちなみにこの部分を書いている段階では僕自身もどんなレポートになるのかまだ考えてはいない)、どんな内容をこれから書いても大丈夫なように予防線を張っておくのだ。で、この文章の次には、生活形態の変化について書かなくてはならないだろう。ここで使うのが「具体例の提示」である。この具体例の提示は、今後のことを考えて情報科学について書くのが良い。

例えば我々は情報科学の発達に伴い、多くの時間をパソコンや携帯電話といった媒体の前で過ごすことが飛躍的に多くなってきている。

これは常識的に見て明らかに正しい。そしてこの例からどのようなことが想像できるか。正直な話、内容が無いものを書こうとしているのだから、このような例から話を発展させていくのが一番の文字数増加への近道なのである。こういうときに使えるのが「論理的発展」である。

すなわち我々がディスプレイを目にする機会が10年前に比べて飛躍的に増加している。これによって、色彩学の対象も実際にある物質からディスプレイに映った映像へと重点を移す傾向が見られる。

これはなんかもっともらしい内容である。正直これが正しいかどうかは知らない。でもまあ、嘘ではないと思う、位の気持ちで書いても問題が無いだろう。で、このあたりでとりあえず話が一区切りついてしまった。なぜならば、ここから話を発展させるだけの能力が僕に無いからであって、そういうときには話をちょっとずらしていくのに限る。あるいはちょっと話を戻して同じようなことを言ってみるのも良い。

色彩学というのは、人間から見て物がどのように見えるのか、どう感じられるのか、ということを研究する学問である。この意味で、色彩学の本質は人間の生活に大きく根付いているものだと言えるだろう。すなわち我々の生活スタイルが変化したのであるから、色彩学自体が変化しなければならないのは自明である。では、どのように変化すればよいのだろうか。

これで論点のすり替えは完了。この後は変化について適当にでっち上げていけばよい。なぜならば、「どのように変化してきたか」ではなくて「どのように変化するべきか」という過去ではなくて未来の話をしているのだから、たとえそれが間違った結論を出したところで問題はない。こういう二重三重の予防線があれば、もっともらしく読める文章が書けるのである。で、この後の話も適当に情報科学という文字を入れながら進めていった方がいいかもしれない。

まず第一は、今後の我々の生活が、今後もコンピュータに依存するようになるということが予想される。そうであれば、どういう色がどのようにコンピュータで表現されているのか、あるいは表現することが出来るのか、というコンピュータで扱える色彩というものについての理解や研究をしていくことが必要になるだろう。

いかにももっともらしい文章が書けた。ここで注目したいのは、「まず第一は」と書いている点である。この後いくつ例が思いつくかまだ分からないのだから、とりあえず一つと言うことで書いておくのが良い。もしもこの一つの話題を広げることが出来るのであれば、別に二つ目は無くても構わない。一番大切なことだけ書いておくというのは良くある話なのだから、二つ目以降は枝葉末節であるということにすればよいのだ。で、ここでかなり色彩学とコンピュータがつながってるよ、という話になったので、そこから議論を広げてみよう。さらに、ぶっちゃけそろそろ色彩学についての知識が無いので、色彩学の話をこれ以上するのは危険なにおいがするので、コンピュータの話にシフトしてみよう。コンピュータの話であれば、正直我々の専門分野なので、いくらでも適当に文が書ける。その上で、直前で書いた話と同じようなことをもう一度書いてみればよい。

コンピュータは、今なお高速化や大規模化が行われていて、どんどん発達している。性能向上という点だけ見ても、10年前からすれば比べ物にならないほどにCPUのクロック数は上がっているし、メモリやハードディスクの容量も信じられないペースで向上している。あるいは新しいアルゴリズムや手法と言うのは開発され続けている。開発手法に関しても多くの研究がなされているし、今までは作ることが出来なかった大規模なシステムがこれからも作られていくことになるだろう。このような環境の中で、色彩学に対してどうやってアプローチをしていけばよいのだろうか。

他の部分に対して、力を入れなくても長い文章が書けているのが分かると思う。それでいながら内容は無いし、同じことを言っているだけである。この部分が長いレポートを書くために必要なのだ。だが、ここでアプローチ手法について何も思いつかないことに気づく。どうしたものか、となる。そういう時には、よく分からない、と書けばよいのだ。適当なのだから。

しかしながら、色彩学というものは長い期間にわたって、情報科学とは無縁の発達をしてきた。この理由は単純で、昔はコンピュータというものがほとんど存在せず、しかしながら人間の色彩に対する興味が存在していたため、あえて情報科学と一緒に考える必要が無かったためである。そのため、情報科学も色彩学という特定の学問を意識することなく生まれ、進歩してきた。だからこそ、今後はお互いの分野についてよりよく理解をすることが必要だと考えられる。例えばバイオインフォマティクスやCGの分野であれば、そもそもは生物学や絵という情報科学とは関係の無い分野であったものが、相互のやりとりを行っていく中で発達し、現在注目を集めている。これと同様に色彩学についても、そのためのアルゴリズムの開発や扱うための機器を生むことが必要になってくると考えられる。

ここで重要なのは、バイオインフォマティクスやCGという具体的な学問の名前を出している点である。これによって、レポートの先が少し見えるようになっている。つまり、情報科学の他の分野へのアプローチの具体例を出すことで、それと同じ、と書けばよいのだ。そもそも、こういう問題に関して斬新な提案が出来るようならばこんなレポートで苦労したりはしない。それならば、過去に学ぶと言う方針が何よりも楽だし、そうすべきなのだ。で、ここまでで文章的にはWordだとちょうど1枚くらいに収まる感じである。内容的にはそろそろ終わりにして、今後は言いかえを行ったりしてみよう。

逆に、色彩学において必要なアルゴリズムや機器を情報科学の分野に対して要請する事が必要になってくるだろう。情報科学は今まで必要性があったからこそ発展してきたし、これからもそうやって発展していくことが想像できる。

で、最後はきれいごとを書いて締めくくろう。

色彩学と情報科学は確かにそれほど密接に関わってきたわけではないが、コンピュータがこれだけ発達している昨今では、色彩学は情報科学を無視することはできないだろうし、情報科学もそれをサポートする義務がある。おそらく数年先には色彩学と情報科学は切っても切れない関係になるだろうし、そうすることでお互いの分野はより発達し、我々の生活はより豊かになっていくだろう。

さて、これを全部まとめてコピペするとこうなる。

色彩学は、色と人間の関係について様々な角度から考察する分野であり、以前よりたくさんの研究がなされてきた。そして近年、さらにその重要性が高まってきている。重要性が高まってきている理由についてはいくつかあるが、その中の一つとして我々の生活形態の変化が挙げられる。例えば我々は情報科学の発達に伴い、多くの時間をパソコンや携帯電話といった媒体の前で過ごすことが飛躍的に多くなってきている。すなわち我々がディスプレイを目にする機会が10年前に比べて飛躍的に増加している。これによって、色彩学の対象も実際にある物質よりも、ディスプレイに映った映像へと変化してきている。
色彩学というのは、人間から見て物がどのように見えるのか、どう感じられるのか、ということを研究する学問である。この意味で、色彩学の本質は人間の生活に大きく根付いているものだと言えるだろう。すなわち我々の生活スタイルが変化したのであるから、色彩学自体が変化しなければならないのは自明である。では、どのように変化すればよいのだろうか。まず一つは、今後の我々の生活が、今後もコンピュータに依存するようになるということが予想される。そうであれば、どういう色がどのようにコンピュータで表現されているのか、あるいは表現することが出来るのか、というコンピュータで扱える色彩というものについての理解や研究をしていくことが必要になるだろう。
コンピュータは、今なお高速化や大規模化が行われていて、どんどん発達している。性能向上という点だけ見ても、10年前からすれば比べ物にならないほどにCPUのクロック数は上がっているし、メモリやハードディスクの容量も信じられないペースで向上している。あるいは新しいアルゴリズムや手法と言うのは開発され続けている。開発手法に関しても多くの研究がなされているし、今までは作ることが出来なかった大規模なシステムがこれからも作られていくことになるだろう。このような環境の中で、色彩学に対してどうやってアプローチをしていけばよいのだろうか。
しかしながら、色彩学というものは長い期間にわたって、情報科学とは無縁の発達をしてきた。この理由は単純で、昔はコンピュータというものがほとんど存在せず、しかしながら人間の色彩に対する興味が存在していたため、あえて情報科学と一緒に考える必要が無かったためである。そのため、情報科学も色彩学という特定の学問を意識することなく生まれ、進歩してきた。だからこそ、今後はお互いの分野についてよりよく理解をすることが必要だと考えられる。例えばバイオインフォマティクスやCGの分野であれば、そもそもは生物学や絵という情報科学とは関係の無い分野であったものが、相互のやりとりを行っていく中で発達し、現在注目を集めている。これと同様に色彩学についても、そのためのアルゴリズムの開発や扱うための機器を生むことが必要になってくると考えられる。逆に、色彩学において必要なアルゴリズムや機器を情報科学の分野に対して要請する事が必要になってくるだろう。情報科学は今まで必要性があったからこそ発展してきたし、これからもそうやって発展していくことが想像できる。
色彩学と情報科学は確かにそれほど密接に関わってきたわけではないが、コンピュータがこれだけ発達している昨今では、色彩学は情報科学を無視することはできないだろうし、情報科学もそれをサポートする義務がある。おそらく数年先には色彩学と情報科学は切っても切れない関係になるだろうし、そうすることでお互いの分野はより発達し、我々の生活はより豊かになっていくだろう。

簡単だと思うんだけどなー。ちなみに、この文章とレポートは同時進行で仕上げてみました。まとめて2時間くらい。レポート部分の文字数は、1500字弱くらい。