FALLEN

樹崎聖先生を心から愛でている当日記としては、一応レビューをしなくてはならないのかなと思う。
ちょっと前にとある人と、ジャンプに現在物足りないものは何か、という話をした。その際に僕が主張した内容は、リアルな戦いの漫画が欲しいと言うものだった。戦いと言っても、別にリアルファイトと言うことではなくて、例えばスポーツ物であっても超能力を使わないような、そういったもののことだ。
超能力と才能というのは漫画の中では紙一重として描かれることが多い。だが当然のことながら現実世界では全く違うものだ。一流と言われる人たちは、大抵才能があるといっても過言ではない。努力も才能のうちと言う言葉は確かにあるのだけれども、それでも努力だけでは越えられない壁と言うのはやはりあると思うし、見せ付けられたこともある。もちろんこれは一流の人たちが才能の上にあぐらをかいているということは意味しない。だが、才能無しではどれだけ頑張っても一番になることは難しいのが現実だ。
閑話休題。現在のジャンプの中では、才能ではなくてある種の超能力において主人公や敵が戦うというものしか存在していない。リアリティがないと言い換えることも出来る。「アイシールド21」でさえ、どう見ても派手すぎる。それが面白くないとは言わないが、それだけではつまらない。そこでマガジンに目を向けてみると、マガジンにはそういった漫画がいくつか存在している。「あひるの空」「OVER DRIVE」がそれだ。
僕は最近「OVER DRIVE」がかなり好きだ。糞まじめに自転車を漕いでいるだけだけれども、そのまじめさの中でも面白いシーンと言うのはあるし、非常にアツくなれる漫画だ。で、ちょうどこの「FALLEN」もマウンテンバイクの漫画ということで、フィールドとしては同じになるだろう。そうなると、比較してどうか、どちらが面白いかと言う話になる。
正直な話をしよう。「FALLEN」は面白いとはいえない。このまま連載を勝ち取ったとしてもおそらく単行本は多くて3冊と言うことになるだろう。打ち切り漫画コレクターとしては、コレクションが増えるのは嬉しい事なのだけれども、この程度のクオリティの打ち切り漫画を増やしたところで大したことにはならない。その理由としてはいくつか挙げられるのだけれども、「作品の背景が分かりづらい」「脇役のキャラクターが立っていない」「ダウンヒルというスポーツがよく見えない」という点がある。一つずつ行こう。
「作品の背景が分かりづらい」だが、最初のシーンは学園物だ。F組というのが落第クラスであって、という解説があり、タイトルにも絡めてFALLENの略のようだけれども、本来落第を意味するFはFailやFailureの略だし、無理やり感が否めない。さらに、これが日本なのか海外なのかも画だけでは判断に困るところだ。作品の全体的に言えることなのだけれども、「日本っぽくない」というのが言える。それならそれでもいいのだけれど、日本を描くなら日本、海外なら海外と割り切って欲しいところだ。
「脇役のキャラクターが立っていない」についても同じような感じだ。これはあくまで読みきり短編だ。連載作品じゃない。それならば、不要な脇役を登場させる必要は無い。むしろF組の友達と言うのを登場させる必要すらなかったんじゃないだろうか。しかも友達はますます日本人っぽくないし。何のために登場させているキャラクターなのかが分からない。何も手伝ってくれてないし。不要なものは不要として登場させない勇気も必要だと思う。
ダウンヒルというスポーツがよく見えない」というのは、最大にして致命的な問題だ。これは上記の二つの問題点が引き起こしている問題とも言える。つまり、余計なシーンに気を取られてダウンヒルの面白さをを読者が楽しめない。つまり、目的がよくわからないのだ。ダウンヒルをみんなに知ってもらいたいという漫画なら、もっとダウンヒルばかりにすべきだろうし、アツいシーンを見てもらいたいと言うのならば、その点を強調すればいいし。確かにベテラン作家だし、技術はあると思うのだけれども、連載を勝ち取ることばかりを考えてしまって、短編漫画を描くということを少し忘れているのじゃないかなと思った。
結構辛口の評価だけれども、こんな感じで。